日本にはあまり馴染みがないかもしれませんが、Grand Tour (グランド ツアー) という言葉をご存知ですか?

グランドツアー

グランドツアーは、17 世紀から 19 世紀にかけてヨーロッパ、特に島国であるイギリスの若い貴族が、大学などの卒業後に行った「修学旅行」のようなものでした。

当時のグランドツアーは、上流階級の貴族にとっての社会勉強として位置付けられており、当時ヨーロッパの文化先進国であったフランスやイタリアを巡り、芸術・建築・政治・歴史・古典文化や、上流社会を体験する良い機会となっていました。

そこには大陸の優れた食文化を体験する機会も含まれており、当時の若者たちもイタリア各地の個性あふれるワインや料理を大いに楽しみました。

今回は、当時のグランドツアーになぞらえて、イタリアの主要都市を巡るように、その歴史や文化を紹介しながら、TAPS で取り扱っている各都市にちなんだワインをご紹介します。

トリノ市 (ピエモンテ州)

イタリア北西に位置する、現在イタリア第二の都市であるトリノは、北部をアルプス山脈、南部をアペニン山脈に囲まれた山間の平地の一角にあり、古くからイタリア北部の歴史と文化の中心でした。

グランドツアーの目的地の1つとなるのも当然で、ローマ人によって建設されたトリノは、1416年にはサヴォイア王家が支配するサヴォイア公国の一部となり、1559年にサヴォイア公国の首都がフランスのシャンベリーからトリノに移され、その後 サヴォイア公国はサルディーニャ公国と名前を変えたのち、1861年にイタリア統一を成し遂げます。

そのとき首都だったトリノは、1861年から1865年までの間イタリア王国の首都でもありました。

トリノには、国立映画博物館を有する モーレ・アントネリアーナ (かつてのユダヤ教の礼拝堂)、サヴォイア王家の王宮や宮殿スペルガ聖堂 などの象徴的なエレガントなバロック様式の建物やモニュメントが数多くあり、一見の価値のある都として、当時の貴族たちの憧れの街でした。

またトリノには、1824年にカイロに次ぐ規模の エジプト博物館 が設立された事もあり、ヨーロッパにいながらエジプト文化に触れることもできました。現在でもたくさんの観光客が足を運んでいます。

今日トリノは、イタリア国内で経済や工業の中心としても発展し、イタリア自動車産業のシンボルでもある FIATの本拠地 としても有名です。

また、トリノが位置するピエモンテ州は農業も盛んな肥沃な土地であり、何世紀も人々を楽しませてきた美食とワインの伝統もあります。

トリノから数km南に下ると、世界中のワイン愛好家から愛される ランゲ地区 があり、同地区の美しい丘で栽培されるブドウからは、バローロバルバレスコ が生まれます。また、イタリアを代表するスパークリングワインである アルタ・ランガ もこの地区で造られています。

そんなランゲ地区の中で、私たちTAPSが出会った特別なワイナリーの1つがガブリエレ・スカリォネです。

彼のワイン造りに注ぐ情熱は、ランゲの伝統に配慮しつつも、ワインスペシャリストが驚くような型破りなワインを造り出し、高品質で本物のイタリアワインを求める方にご好評いただいています。

ガブリエレ・スカリョネ氏

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ミラノ (ロンバルディア州)

グランドツアーの目的地として、当時の若い貴族たちにとって欠かすことのできない目的地だったミラノ。

すでに商業と金融の中心地であったこの都市は、 ドゥオーモ (ミラノ大聖堂)のような壮大なゴシック建築の建築、 サンタ・マリア・デ・グラツィエ教会 の食堂に施された壁画であるレオナルド・ダ・ヴィンチによる「最後の晩餐」 、世界で最も権威あるオペラハウスの一つである スカラ座 などのモニュメントが有名です。

早くから多くの人種や文化が行き交っていたミラノでは、グランドツアーが流行った当時からサロンが存在し、最先端のアイデア、文学、アート、ファッションなど垣根を超えた文化交流によって、魅力溢れるムーブメントが次々に生まれました。

グランドツアラーにとっては刺激的な体験になったことでしょう。

ミラノから数km 離れると、稀有なワインを生み出す壮大な景観の丘が広がる、ここが オルトレポ・パヴェーゼ です。

この地域は、2つのブドウ品種が特に有名で、1つ目は ピノ・ネロ (ピノ・ノワール)です。オルトレポ・パヴェーゼのピノ・ネロからは非常にフルーティな早飲み赤ワインや、伝統製法のスパークリングワイン(特に優れたロゼワイン) が造られます。

2つ目は リースリング です。この地方のリースリングは、柑橘系の香りとミネラル感のある味わいが特徴の白ワインを生み出すことで有名で、なおかつ価格が品質に対してリーズナブルである事が、他の地方ワインと比較しても優れていると言えます。

オルトレポ・パヴェーゼに数あるワイナリーの中で TAPS が注目したのは、ジョルジ社。

大企業であるにも関わらず、家族の強い絆とワイン造りに対する強い使命感があり、最先端技術を採用しながらも、伝統的な味わいが反映されたワインを生産しています。

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ヴェネツィア(ヴェネト州)

ヴェネツィアは世界でも類を見ないユニークで魅力的な都市であり、いつの時代にも旅行者の憧れの的。

壮大な サン・マルコ大聖堂 やヴェネツィア共和国の力と歴史の象徴である ドゥカーレ宮殿 などの並外れた建築、町中に張り巡らされた運河フェニーチェ劇場 では毎晩最高レベルのオペラが上演され、街中に点在する多くのアトリエでは、職人たちが作ったアートや工芸品をお土産として購入することもできます。

また、世界三大カーニバルの一つ「ヴェネツィアカーニバル」が行われ、豪華な衣装と仮面を身につけることで素性を隠して交流する祭典が開催され、地元の人々だけでなく、多くの旅行者も参加したと言われています。

このような魅力を持つヴェネツィアは、グランドツアーの目的地として多くの人気を博していました。

ヴェネツィアがあるヴェネト州には、世界で一番飲まれているスパークリングワイン 「プロセッコ」 があります。

プロセッコはキレのある泡、フルーティな香り、軽い飲み味で世界のワインラバーに愛されていますが、あまりに有名であるがゆえに、プロセッコの中にも品質や作り方の違いがあることはあまり知られていません。

歴史を含め、本当に価値のあるプロセッコを輸入したいと考えた、私たち TAPS がたどり着いたのは、プロセッコ生産地域の中でも伝統ある、 “コル・デル・サス” という葡萄畑で「コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ DOCG」 という高い格付けに認定されたスパークリングワインを造る、家族経営ワイナリー 「スパニョール」 です。

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ラヴェンナ(エミリア・ロマーニャ州) 

エミリア・ロマーニャ州にある古代ローマ時代から中世にかけて繁栄した都市ラヴェンナは、ヴェネツィアから南に下り、ボローニャ、その先のフィレンツェやローマへ旅するグランツアラー達の経由地として人気がありました。

ラヴェンナで人々が目にしたのは、現在ではユネスコ世界遺産に登録されている 数々のモザイク画が施された廟堂や大聖堂 などの 初期ビザンティン美術 の傑作でした。

またラヴェンナには、政争に敗れてフィレンツェを追放され、この土地でかの有名な叙事詩 “神曲” を完成させた詩人、ダンテが眠る墓 があり、文学に興味のあった当時の若者達が訪れ、敬意を表したとされています。

そんなラヴェンナから70km ほど南に下り、サンマリノとの国境近くのヴェルッキオという村に、自然保護区に指定された広大な土地「テヌータ・ガッチ」があります。この土地では3000年以上も前から葡萄栽培が行われてきたという言い伝えがあり、実際に出土した遺跡などからも、当時の人々が栽培した葡萄からワインを造っていたらしい事もわかっています。

ワイナリー「テヌータ・ガッチ」はその土地と伝統を尊重し、自然保護区に認定された土地の一部で、厳選された自然派ワインを少量生産するオーガニックワイナリー。ガッチのワインはヨーロッパを代表する一流ホテルやミシュラン星付きレストラン、世界的モータースポーツであるF1 (フォーミュラ1) に参戦しているフェラーリチームのパドック公式ワインとして採用されています。

テヌータ・ガッチ

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フィレンツェ(トスカーナ州) 

ルネッサンスの中心地であったフィレンツェは、芸術、文化、歴史に深く浸ることのできる、知的な雰囲気を持つ街として、グランドツアーへ出る当時の若者達の間では絶対に外せない目的地でした。

フィレンツェでは、ミケランジェロの傑作 ダビデ像 や、ボッティチェッリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロの作品など歴史の名作が至る所に展示されており、建築の分野でも有名な大学や研究機関が存在します。

また、 ウフィツィ美術館 の図書館などでは、貴重な写本や珍しい図書を直接閲覧する事もでき、当時の若者たちにとってはここでしか得られない貴重な体験になった事でしょう。

フィレンツェのような特別な都には特別なワインが似合います。私たちがフィレンツェ近郊で出会ったワイナリー、フォッシは、創業者のエンリコ・フォッシと息子のサッシャ・フォッシが 2人で営む小規模ワイナリー。

トスカーナ地方では珍しい国際葡萄品種を使い、それぞれの品種 100%を使用して造るワインが軒並み高評価を得ていて、一度味わうと忘れられない個性を持つ唯一無二のスタイル。生産量も限られる希少なワインです。

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オルヴィエート(ウンブリア州)

オルヴィエートはイタリア中部のウンブリア州にある古都で、フィレンツェからローマへ移動する道中にある街の中の1つといった位置付けで、当時のグランドツアラーにとっては主要な目的地ではありませんでした。

しかし、古代イタリアの歴史や文化、自然の美しさ、あまり知られていない場所を訪れてみたい好奇心旺盛は若者にとっては、魅力的な街で、オルヴィエートはその豊かな自然が育む豊富な農作物のおかげで、イタリアきっての 美食の街 として知られていました。

歴史的に高品質な食とワインを生み出してきたオルヴィエートで、私たちが出会ったワイナリーはアルタロッカ。健康と美食の両方を追求するオーガニックワイナリーで、地元の豊かな自然を活かしたアグリツーリズモを営んでいます。

宿泊しながら、ワイン造りや葡萄畑の見学もできるワイナリーで、オルヴィエートの食・ワイン・自然とオリヴィエートを存分に満喫できる場所です。

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ローマ(ラツィオ州)

ローマは間違いなくグランツアーの最大の目的地の一つでした。紀元前から数千年の歴史を持つこの古代都市はユニークで奥深い建築や文化遺産を多く有し、若い貴族の旅行者たちに貴重な体験をもたらしました。

古代ローマの象徴 コロッセオ 、ローマ帝国の歴史を感じる インペリアルフォーラムナヴォーナ広場スペイン広場 では現在と同じように人々が待ち合わせ、雄大な彫刻のある トレヴィの泉 を見るために立ち止まったのは、当時も同じでした。

さらに、バチカンには世界最大級の教会建築である サン・ピエトロ大聖堂 やローマ教皇を選出する会議コンクラーヴェの開催場所があり、ミケランジェロの天井フレスコ画最後の審判 が描かれている システィーナ礼拝堂 などもあり、歴史に名を残す建築や名画に触れるまたと無い機会となりました。

私たちがこの地域で出会ったの1つが、ローマから数km南に下ったテッラチーナという街にあるサンタンドレアです。彼らの厳格なワイン造りはイタリア国内外で高く評価され、数々の受賞歴があるワイナリーです。

サンタンドレアの チルチェオ・ロッソ と チルチェオ・ビアンコ は伝統を感じる造りでありつつも、どこか素朴さを感じるワインで、デイリーワインとして肩肘張らずに楽しむ事ができるワインを生産しています。

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    Gabriele Scaglione / ランゲ ビアンコ DOC 2015 "Ellis"

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