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ネッビオーロとは?「ワインの王」を生む高貴な品種
ネッビオーロは、イタリア北部ピエモンテ州原産の黒ブドウ品種で、世界的に名高い「バローロ」や「バルバレスコ」を生み出すことで知られています。サンジョヴェーゼと並び、イタリアワインを語る上で欠かせない最重要品種の一つです。
その歴史は古く、13世紀にはすでに記録が残されており、800年以上にわたってピエモンテの地で栽培されてきました。ネッビオーロという名前の由来は、イタリア語で「霧」を意味する「ネッビア(Nebbia)」から来ています。これには二つの説があり、ブドウの果皮が蝋分(ろうふん)で覆われて霧のように見えること、そして晩熟のため収穫期が10月下旬から11月にかけての霧の季節と重なることに由来すると言われています。

ネッビオーロの品種特性:栽培の難しさと希少性
ブドウの特徴
ネッビオーロぶどうは、以下の特徴を持っています。
葉:深緑色で 18cm ほどの大きさ。秋には黄色に変色し、11月中旬に落葉
房:中程度の大きさで、薄く白粉に覆われたような果皮
果実:水分が多く、酸味と強い渋味、甘みを同時に感じる
収穫期:10月中旬〜下旬の比較的晩熟な品種
栽培の難しさ
ネッビオーロは、気難しい品種として知られており、栽培には細心の注意が必要です。
栽培上の課題
- 発芽が早く、春の霜害を受けやすい
- 果皮が薄いため病害に弱い
- 晩熟のため、収穫期の降雨リスクがある
- テロワールに非常に敏感で、わずかな環境の違いが品質に影響
- 春先の気候に敏感で、収穫量が不安定
このような栽培の難しさから、ネッビオーロはピエモンテ州でも全黒ブドウ栽培面積の第 3 位にとどまり、同州のワイン総生産量の 6%程度という希少な品種となっています。

ネッビオーロに適したテロワール:土壌と気候条件
理想的な栽培条件
ネッビオーロの栽培に最も適した条件は以下の通りです。
標高:150〜350m(場所により 450m まで)
方角:南向きの斜面
土壌:泥灰土(マール)を基本とし、地域により砂質や粘土質が混じる
気候:大陸性気候で昼夜の寒暖差が大きい
テロワールによる味わいの違い(バローロ・バルバレスコ地区)
ネッビオーロは イタリアのピノ・ノワール とも呼ばれ、テロワールの個性を色濃く反映する品種です。
バローロ地区の土壌による違い(西側・東側)
西側(ラ・モッラ、バローロ村)
土壌:トルトニアーノ(泥灰土と砂が混じる)
特徴:マンガンとマグネシウムが豊富
ワインの味わい:香り高くエレガント、比較的早熟で柔らかい
東側(セッラルンガ・ダルバ、モンフォルテ・アルバ、カスティリオーネ・ファレット)
土壌:エレヴィツィアーノ(鉄分の多い赤茶色の泥灰土)
特徴:鉄分が豊富
ワインの味わい:厳格でスパイシー、力強く長期熟成型
バルバレスコ地区
土壌:バローロより砂質が多く粘土が少ない
気候:標高が低く、昼夜の気温差が比較的小さい
ワインの味わい:バローロより軽やかで優美、熟成が早い
参考記事)ピエモンテ州のワイン特性
参考記事)バローロの魅力と楽しみ方
ネッビオーロ ワインの特徴:色・香り・味わい
外観
ネッビオーロから造られるワインの色調は、他の黒ブドウ品種とは一を画します。果皮の色素が少ないため、淡いルビーやガーネット色を呈し、長期熟成したものは褐色がかった美しいオレンジ色になります。
香り
若いワイン
- バラやスミレなどの華やかな花の香り
- チェリー、プラム、ラズベリーなどの赤い果実
- 若干のスパイス
熟成したワイン
- タバコ、なめし皮
- トリュフ、キノコ、腐葉土
- ドライフルーツ(干しプラム、乾燥イチジク)
- リコリス、野薔薇
- 複雑で奥深い香りの層
味わい
ネッビオーロの最大の特徴は、豊富なタンニンと高い酸味です。
若いワインの特徴
- 色合いや香りからは想像できないほどの渋み
- 強い酸味
- かたく引き締まった印象
- 飲みにくいと感じられることも
熟成したワインの特徴
- タンニンが果実味に溶け込み滑らかに
- 酸味が心地よく調和
- 複雑で艶やかな風味
- ヴェルヴェットのような舌触り
この特性から、ネッビオーロのワインは伝統的に長期熟成を経てからリリースされます。バローロでは最低3年間(うち2年は樽熟成) 、実際には10〜15年、良年のものは20年以上の熟成に耐えるポテンシャルを持ちます。
ネッビオーロの別名:地域による呼び方の違い
ネッビオーロは地域によって異なる名前で呼ばれています。
- ネッビオーロ – ピエモンテ州南部クーネオ県
- スパンナ – ピエモンテ州北部(ガッティナーラ、ゲンメなど)
- キアヴェンナスカ – ロンバルディア州ヴァルテッリーナ地方
- ピコテンドロ/ピクトゥネール – ヴァッレ・ダオスタ州
同じネッビオーロでも、地域の気候や土壌の違いにより、それぞれ異なる個性を持つワインが生まれます。
醸造スタイルの進化:伝統派とモダン派
伝統的醸造法
長期マセレーション:3〜4ヶ月にわたる果皮との接触
大樽での長期熟成:5〜8年程度
特徴:重厚で力強い、飲み頃まで時間がかかる
モダン醸造法(1980年代〜)
短期マセレーション:抽出期間を短縮
小樽熟成:新樽の使用も
厳しい選果:完熟ブドウのみ使用
特徴:若いうちから楽しめる、果実味が豊か
2025年 現在のトレンド
近年は技術の進歩により、伝統とモダンの垣根が低くなり、生産者が目指すスタイルに応じて柔軟に技術を組み合わせる傾向にあります。その結果、若くから楽しめるネッビオーロも増えてきました。
また、テロワールの個性を尊重したワイン造りが主流となり、同じネッビオーロでも造り手によってスタイルが多様化しています。特に、単一畑のワイン(クリュ・バローロなど)が注目を集め、畑ごとの個性を楽しむ文化が広がっています。
ネッビオーロで造られるワインの種類
ネッビオーロ DOC
洗練されていてエレガント、軽いスパイスの効いた香り、ネッビオーロ独特の酸味と樽熟成によるタンニンがあり、非常にしっかりとした味わいを持ち、熟したブドウとバラの風味の余韻 が残ります。
脂身が多いマグロの中トロや鮒鮨、レバーや手羽先などの焼き鳥と相性抜群です。
<TAPS おすすめ ネッビオーロ DOC>

Azienda Agricola Cieck / カナヴェーゼ ネッビオーロ DOC 2011 “Nebbiolo”
洗練されていてエレガント、軽いスパイスの効いた香りに、ネッビオーロ独特の酸味と樽熟成によるタンニンがあり非常にしっかりとした味わい、熟したブドウとバラの風味の余韻が残ります。
バローロ DOCG – ワインの王様
ネッビオーロを100%使用した、イタリアを代表する最高峰の赤ワイン。 「ワインの王様」 と表されるほど香り高く、奥深い、骨格がしっかりした重みのある味わい のワインです。
若いワインと熟成したワインで渋味や酸味に違いが現れやすく、熟成すればするほどタンニンが和らぎ、非常に複雑な風味の艶やかなワインとなります。20年以上の長期熟成にも耐えるポテンシャルを持っており、最低3年間、うち2年は樽熟成の法定熟成期間を経て、リリースされます。
おすすめのペアリングとしては、肉料理なら牛肉のステーキ、すき焼き、ローストビーフなど、ブルーチーズやパルミジァーノ、白トリュフなどとの相性が抜群です。
クリュ・バローロの注目:近年は単一畑のバローロが注目され、特にカンヌビ、ブッシア 、ブルナーテなどの畑名が表示されたワインは、テロワールの個性がより明確に表現され、世界中のワイン愛好家から高い評価を受けています。
参考)バローロの魅力と楽しみ方
<TAPS おすすめ バローロ DOCG>

Gabriele Scaglione / バローロ DOCG 2018 “Passione di Re”
力強く、独特な香り、熟した果実の香りがかすかに香り、味わいは濃厚でバランスがよく、軟らかいタンニンが効いています。
バルバレスコ DOCG – ワインの女王
「ワインの女王」 と呼ばれる、ピエモンテ州を代表するもう一つの赤ワイン。ネッビオーロ100%で造られ、しっかりとしたストラクチャーと酸味 を持ち、バローロに比べて、より洗練されたエレガントで柔らかな口当たりが特徴的です。
比較的早くから楽しめる人によって、バローロより、バルバレスコの方が優れたワインであると評する専門家もいるほどその人気は根強く、一度味わうとクセになる魅力を持っています。
基本的な食べ合わせはバローロと同じですが、ラグーのパスタなど家庭料理とも合わせやすいと言えます。
<TAPS おすすめ バルバレスコ DOCG>

Gabriele Scaglione / バルバレスコ DOCG 2020 “Come un volo”
濃厚なガーネット色に、下草の香りのエレガントなアロマ。濃厚でバランスがよく、ヴェルヴェットの様な舌触りで、バローロに比べソフトなタンニンが特徴。
ランゲ・ロッソ DOC
ランゲ地方で獲れる 黒ぶどうをブレンドして造られる、ミディアムボディ の赤ワイン。ネッビオーロを中心にブレンドすることが多く、ブレンドされる品種により味の違いはあれ、比較的バランスの取れた安定した味わいのワインが多いです。
バローロ、バルバレスコなどに比べフルーティで果実味があり爽やかな印象です。
<TAPS おすすめ ランゲ・ロッソ DOC>

Gabriele Scaglione / ランゲ ロッソ DOC 2015 “Tutto dipende da dove vuoi andare”
僅かにガーネットがかった濃いルビーレッドに、熟した果実の感覚にほんのりと香るスモモとベリーの味わい。濃厚でバランスがよく、ヴェルヴェットのような舌触り。
ランゲ・ネッビオーロ DOC
ランゲ地方で収穫されたネッビオーロを100%使用した、エレガントな赤ワイン。バローロやバルバレスコと同じ畑で育ったぶどうから造られ、若木のフレッシュさと熟成のポテンシャルを兼ね備えています。
チェリーやプラムなどの赤い果実のアロマに、バラやスパイスのニュアンスが加わり、ネッビオーロらしい酸味としっかりとしたタンニンが心地よく調和。バローロほど重厚ではなく、より親しみやすいスタイルで、日常の食卓にも寄り添う一本です。
「ヤング・バローロ」とも呼ばれ、バローロ愛好家のデイリーワインとして人気があります。
ペアリングとしては、ラグーのパスタやローストチキン、熟成チーズとの相性が抜群です。
その他の注目産地
ロエロ DOCG:タナロ川北部、砂質土壌が多く、芳香に優れた繊細で華やかなワイン
ガッティナーラ DOCG:ピエモンテ州北部、火山岩土壌で繊細で硬質、ミネラル豊富な厳格なスタ
イル
ゲンメ DOCG:ガッティナーラの東、粘土堆積土壌で柔らかくどっしりとした味わい
ヴァルテッリーナ・スーペリオーレ DOCG:ロンバルディア州、アルプス山麓で華やかで透明感のあ
る味わい
スフルサート・ディ・ヴァルテッリーナ DOCG:陰干しブドウで造る「ネッビオーロのアマローネ」
とも呼ばれる特別なワイン
2025年 最新のネッビオーロ ワイン トレンド
若飲みスタイルの進化
技術革新により、若いうちから楽しめるネッビオーロワインが増加しています。抽出技術の向上や醸
造管理の精密化により、タンニンの質が改善され、リリース直後から親しみやすい味わいを実現して
います。
テロワール重視の単一畑ワイン
ブルゴーニュの「クリュ」の概念をいち早く取り入れたバローロを中心に、単一畑のワインへの注目
が高まっています。畑ごとの個性を表現した「クリュ・バローロ」は、世界中の愛好家垂涎の的とな
っています。
自然派・ビオディナミへの関心
環境に配慮した栽培と醸造への関心が高まり、有機栽培やビオディナミ農法を採用する生産者が増え
ています。テロワールの純粋な表現を追求する動きが加速しています。
手頃な価格帯のネッビオーロ
ランゲ・ネッビオーロやネッビオーロ・ダルバなど、バローロやバルバレスコよりも手頃な価格帯の
ワインが、入門者や日常使いとして人気を集めています。
ネッビオーロ ワインの楽しみ方
保存と熟成
ネッビオーロワインは長期熟成向きの品種です。
保存条件
- 温度: 12〜15℃の一定温度
- 湿度: 70〜75%
- 暗所で水平に保管
- 振動を避ける
熟成の目安
- ランゲ・ネッビオーロ 3〜7年
- バルバレスコ 8〜20年
- バローロ 10〜30年以上
サービング温度とデキャンタージュ
温度 16〜18℃が理想的
デキャンタージュ 若いワインは2〜3時間前、熟成したワインは1時間前に開栓し、澱を取り除きながらデキャンターゼするとより楽しめます。
グラスの選び方 大ぶりのブルゴーニュ型グラスが理想的。ボウルが大きいことで香りが開き、複雑なアロマを存分に楽しめます。
季節の楽しみ方 秋から冬にかけての季節に特におすすめ。ネッビオーロの複雑な香りは、キノコやトリュフなど秋の味覚と絶妙にマッチします。
ネッビオーロ ワインに合う料理
肉料理
- 牛肉:ステーキ、ローストビー フ、すき焼き、ビー フシチュー
- 子羊:ラムチョップ、ローストラム
- ジビエ:鹿肉、猪肉、鴨肉のロースト
- 煮込み料理:ブラザート、オッソブーコ
イタリア料理
- パスタ:ラグー・ボロネーゼ、タリアテッレ、トリュフのパスタ
- リゾット: ポルチーニ茸のリゾット、トリュフのリゾット
- ピエモンテ郷土料理:バーニャカウダ 、ヴィテッロ・トンナート
チーズ
- パルミジャーノ・レッジャーノ(長期熟成)
- ペコリーノ
- ゴルゴンゾーラ
- タレッジョ
- ブルーチーズ全般
和食とのペアリング
意外にも和食との相性も抜群です。
- 脂身の多いマグロの中トロ
- 鮒鮨などの発酵食品
- 焼き鳥(レバー、手羽先など)
- すき焼き
- 牛しゃぶしゃぶ
まとめ:ネッビオーロ ワインの魅力
ネッビオーロは、栽培の難しさゆえに限られた地域でしか育たない希少な品種ですが、その分、造られるワインは唯一無二の個性を持ちます。
ネッビオーロ ワインの魅力
- 長期熟成のポテンシャル
- テロワールを忠実に表現する高貴な品種特性
- 複雑で奥深い香りと味わい
- 時間とともに進化し続ける変化の楽しみ
- 多様なスタイルと価格帯
「ワインの王」バローロから、日常を彩るランゲ・ネッビオーロまで、幅広い選択肢があるのもネッビオーロの魅力です。あなたの好みやシーンに合わせて、ぜひネッビオーロの世界を探求してみてください。
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